クラミジアは、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)という細菌が原因となる性感染症(STI)です。この細菌はヒトの細胞内で増殖するという特徴を持ち、感染が進行しても症状が軽度であるために感染に気づかないケースが多く見られます。国内の性感染症の中でも特に感染者数が多く、特に10代後半から30代前半の男性に多く発症が確認されています。感染経路は主に性行為によるもので、膣性交、肛門性交、さらには口腔性交でも感染することがあります。また、粘膜同士の接触でも感染リスクがあるため、コンドームを使用していても100%の予防とは言えません。
男性における尿道クラミジアの感染経路
男性の場合、クラミジア感染は主に尿道に起こります。感染源となるのは、クラミジアに感染しているパートナーとの性行為です。性行為時にパートナーの分泌液(精液や膣分泌液)が尿道に接触することで、細菌が侵入し、感染が成立します。特に粘膜の直接接触による感染力は非常に高く、1回の性行為でも感染する可能性は十分にあります。また、オーラルセックスによって咽頭に感染した場合、のちにパートナーとの性行為を通じて尿道に感染が広がるケースもあります。性行為における防御策を徹底することが感染予防にとって重要です。
尿道クラミジアの主な症状
男性のクラミジア感染では、感染しても自覚症状が出ないことが非常に多いとされています。日本の報告によると、男性患者の約50%以上が無症状のまま経過するとも言われています。症状が現れる場合、初期の段階では以下のような兆候があります:
典型的な症状
- 排尿時の痛み(排尿痛)
- 尿道口のかゆみや違和感
- 尿道からの透明〜乳白色の分泌物
- 軽い発熱や倦怠感
症状は数日で軽快することもありますが、これは治癒したわけではありません。細菌が体内で潜伏し、症状を出さずに他人に感染を広げる「キャリア」となる可能性があります。特に、他の性感染症との同時感染(HIV、淋菌など)も起こりうるため、注意が必要です。
放置するとどうなるか
クラミジア感染を治療せずに放置すると、感染が尿道から前立腺や精巣上体(副睾丸)へと広がる可能性があります。前立腺炎になると、排尿困難や会陰部の痛みが慢性的に続くようになり、生活の質を大きく損なう原因になります。また、精巣上体炎を引き起こすと陰嚢が赤く腫れ、激しい痛みを伴うことがあります。
さらに、両側の精巣上体に炎症が及んだ場合、精子の通り道が塞がれてしまい、不妊症の原因にもなります。これらの合併症は一度進行すると治療が難しくなるため、早期発見と早期治療が極めて重要です。
クラミジア感染の検査と診断方法
クラミジア感染が疑われる場合、医療機関では主に次のような検査が行われます:
- 尿検査(第一尿)によるPCR法
- 尿道ぬぐい液からの遺伝子検査
- 咽頭・直腸検体の検査(リスク行為がある場合)
PCR法はクラミジアのDNAを高感度で検出するため、非常に信頼性が高く、現在では検査の主流となっています。検査結果は通常1~3営業日で出ます。泌尿器科や性病科での受診が望ましいですが、近年では自宅でできる郵送型の検査キットも増えており、誰にも会わずに検査が可能です。匿名性を重視する方には便利な手段と言えます。
治療法と治療期間
クラミジア感染の治療は、抗生物質(抗菌薬)の内服で行われます。現在、日本でよく使われる薬剤には以下があります:
- アジスロマイシン(1回の服用で治療可能な場合もある)
- ドキシサイクリン(1日2回、7日間服用)
これらの薬剤は保険診療の対象であり、症状がなくても感染が確認された時点で治療開始となります。また、感染が治ったかを確認する「治癒判定」のために、治療後2〜3週間後に再検査を行うことが望ましいとされています。
治療中はパートナーとの性行為を避け、必要に応じてパートナーも同時に検査・治療を受けることが再感染の予防につながります。
再発と予防策
クラミジアは治療によって一度完治しても、再感染する可能性があります。再感染の多くは、パートナーが治療を受けていなかった、あるいは別のパートナーとの無防備な性行為によるものです。
予防に役立つ習慣
- 性行為時のコンドーム使用(特に初回接触時)
- リスクの高い行為後には性病検査を受ける
- 複数のパートナーがいる場合は定期的に検査する
- パートナーと一緒に検査・治療を受ける
無症状であってもクラミジアに感染している可能性はあり、自身が知らぬ間に他者に感染させてしまうことがあります。性感染症は決して恥ずかしいものではなく、予防と検査を日常的に意識することが、健康を守る第一歩です。
クラミジアは咽頭・直腸にも感染する
クラミジア感染は尿道だけでなく、オーラルセックスやアナルセックスを通じて咽頭や直腸にも感染する可能性があります。咽頭クラミジアはほとんど自覚症状がないため見逃されがちですが、感染源として他者へ広がるリスクがあります。直腸クラミジアでは、肛門のかゆみや不快感、血便などの症状が現れることがあります。これらの部位も含めた検査を行うことで、見落としのない診断と適切な治療が可能になります。
他の性感染症との違いと併発の危険
クラミジアと症状が似ている性感染症に、淋菌感染症があります。どちらも尿道炎を引き起こしますが、クラミジアは比較的症状が軽い一方、淋菌は分泌物が膿状で痛みが強く出ることが特徴です。また、クラミジアに感染している人の中には、淋菌やHIVなど他の性感染症にも同時に感染しているケースがあります。性感染症のリスクがある場合は、複数の病原体を対象にした検査を受けることが推奨されます。
検査はどこで受けられる?費用は?
クラミジアの検査は、泌尿器科・性病科・婦人科・内科など、さまざまな医療機関で受けることができます。また、各自治体が設置している保健所でも無料・匿名で検査を実施している場合があります。費用は医療機関によって異なりますが、保険適用で自己負担はおおよそ1,000円〜3,000円程度です。自宅で行える郵送型検査キットの費用は3,000円〜6,000円程度が一般的です。
パートナーへの通知と支援制度
クラミジアに感染していた場合、過去に性行為のあったパートナーにも感染の可能性があります。性感染症は自覚症状がなくても感染しているケースが多いため、パートナーにも検査を促すことが非常に大切です。医療機関によっては、匿名でパートナーへ通知できる制度を活用できる場合もあります。また、自治体によっては性感染症相談窓口が設けられており、匿名での相談が可能です。性的健康を守るためにも、自己判断せず専門機関に相談する姿勢が重要です。
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